双子の長男坊は、匂いにとても敏感だ。
ただの「好き」「嫌い」じゃなくて、
たぶん“感じすぎてしまう”タイプ。
特殊な空調のあるショッピングセンター
試食を温めているスーパー
ヘアサロンの少し強めな香料。
どこかから何かが香った瞬間、
彼はすぐに反応する。
それはもう、風よりも早く。
さっと、鼻をつまむ。
「ママ、くさい。くさすぎる」
好きな香りには満面の笑みで寄っていくけれど、
苦手な匂いのときは、そっと鼻を摘んで歩く。
私は彼にマスクかタオルを渡して、
手を引いてあるく。
納豆は、もはや地獄らしい。
保育園の給食は仕方なく半泣きで食べている。
私は別に食べなくてもいいんんだけど、
(先生ともそういう話になっているから)
皆んなが食べるからなのか、なにか自分の中のルールがあるのかひとくちは食べる。
保育参加の日の給食は、
ほぼ泣きながら全て食べていた。
それでも、
ミスドの甘い香りには何度でも吸い寄せられる。
「ここ、いい匂いするね」と言って足を止めるその姿には、自分なりに世界と向き合おうとしている誠実さが、確かにある。
香りって、大人でも扱いきれない感覚なのに、
彼はそれに、まっすぐで真剣だ。
だから私も、
家の中の匂いには少しだけ気を配るようになった。柔軟剤を変える前には、そっとボトルをかがせてみる。
「これ、どう?」と聞いてみる。
彼が「うん、いい匂い」と答えると、
それだけで洗濯物がすこし誇らしくなる。
あとは、香料が弱いもの。
入浴剤も最近は、バブとかでも少し強いものは受け付けないからダメなの。
鼻を摘んで歩く姿は、たまに切ない。
だって、そんな子周りにいなくてさ
なんと表現すればいいのか分からない。
でもその指先のしぐさにこそ、
彼の繊細さと世界へのやさしさがある。
きっと彼は、自分の感じ方を守る方法を、
静かに身につけていっているのだと思う。
そんな感性を、守ってあげたい。
香りのある暮らしのなかで、
彼が自分らしくいられるように。